アジア通貨危機とは?
アジア通貨危機は、1997年にタイから始まり、アジア全体に広がった金融危機のことです。
この危機によって、アジアのいくつかの国々で通貨価値が急激に下がり、経済が混乱しました。
特に大きな打撃を受けたのはタイ、インドネシア、韓国などで、通貨の急落により多くの企業が倒産し、失業者が増加しました。
ドルペッグ制とは?
アジア通貨危機を理解するために重要な「ドルペッグ制」について説明します。
ドルペッグ制とは、自国の通貨の価値をアメリカドルに固定する制度のことです。
たとえば、タイのバーツが「1ドル=25バーツ」で固定されていると、為替相場が変動してもバーツの価値は常に1ドル25バーツに保たれます。
この制度により、通貨の価値が安定し、外国との取引がしやすくなります。
しかし、デメリットもあります。
ドルペッグ制のメリットとデメリット
メリット:通貨の価値が一定なので、輸出入や投資などで安定した取引ができます。
デメリット:自国の経済が弱体化しても通貨の価値を維持しなければならないため、ドルを確保するために無理な政策を取る必要が出てきます。もしドルが足りなくなると、通貨価値を維持できず、一気に価値が下がるリスクがあります。
ドルペッグ制がアジア通貨危機を引き起こした理由
1990年代、タイや他のアジアの国々は経済成長を続け、外国からの投資が活発に行われていました。
タイはバーツをドルペッグ制で1ドル=25バーツに固定していたため、経済が安定しているように見え、外国から多くの資金が流入しました。
しかし、アメリカの「強いドル政策」により」ドル高が進行しました。
当然ドルペッグ制を導入しているバーツも連動してバーツ高になり、輸出力が低下しました。
投資家たちは、タイ経済が落ち込み始めているのにもかかわらず、バーツ高が進行していることに対して、矛盾を感じ始め、バーツの価値が下がると予想し大量に空売りを始めました。
すると、ドルペッグ制で固定されたバーツの価値を維持するため、タイ政府は保有するドルを使ってバーツを支えようとしましたが、やがてドルが不足してしまいました。
ついにタイはドルペッグ制を維持できなくなり、1997年7月にバーツを市場に任せる「変動相場制」に移行しました。
これによりバーツは一気に価値を下げ、アジア通貨危機が始まったのです。
アジア通貨危機の影響
バーツの価値が急落すると、他のアジアの国々でも通貨が連鎖的に下落していきました。
韓国やインドネシアなどでの経済不安:韓国やインドネシアも同じように外国からの借金が増えていたため、通貨の価値が下がると多くの企業が倒産し、失業者が増えました。
IMFの支援:通貨危機に陥った国々は、国際通貨基金(IMF)から緊急の経済支援を受けることになりました。その代わり、財政や金融の改革を求められ、厳しい経済政策を実施することになりました。
アジア通貨危機と空売りの関係
アジア通貨危機が始まると、投資家たちは「タイバーツ(タイの通貨)の価値が下がる」と予測し、バーツに対する空売りを行いました。
これによりバーツがどんどん売られることになり、バーツの価値が一層下がるという悪循環に陥りました。
投資家たちは通貨の価値が低くなることで利益を得るため、タイや他のアジア諸国の通貨を空売りすることでさらに通貨危機を拡大させてしまったのです。
そもそも空売りとは?
**空売り(からうり)**とは、実際には持っていない株式や通貨をあらかじめ売るという投資の方法です。次のような流れで行われます:
- 株や通貨を借りて売る
まず、投資家は株式や通貨を借りて売ります。この時点で投資家は売った分の代金を手にしますが、借りた分をいつか返す義務があります。 - 価格が下がったときに買い戻す
投資家は、値段が下がったタイミングで安く買い戻し、借りていた株や通貨を返します。こうすることで、売ったときの高い値段との差額が利益になるのです。
つまり、「空売り」は「値段が下がると予想して行う投資方法」と言えます。
逆に価格が上がってしまうと損が出るリスクがあるため、空売りにはある程度の危険も伴います。
空売りの例
まず、投資家であるAさんは証券会社から5,000バーツを借りた。
借りてきたバーツを半年後をに返す契約を結ぶ。…①
Aさんは、1ドル25バーツの時に借りた5,000バーツを売って250ドル(5,000÷25)買った。
これにより今250ドル手に入れた。
しかし、①より初めに借りたバーツは返さないといけない。
そこで為替の変動で1ドル50バーツになったタイミングで
①の契約を守るために
今持っている250ドルのうち100ドル(5,000÷50)を売って、5,000バーツを買い戻した。…②
②より、5,000バーツを証券会社に返した。
最終的に投資家Aさんは、150ドル(250-100)の利益を得た。