最近、インターネットやSNSで「陰謀論(いんぼうろん)」という言葉をよく聞くようになりました。
陰謀論とは、「本当のことはかくされていて、政府や大きな会社がうらでわるいことをしている」と考える話のことです。
たとえば、「新型コロナウイルスはわざと作られた」とか、「ワクチンは人をコントロールするための道具だ」といった話が、陰謀論にあたります。
このような話は、おもしろく感じるかもしれませんし、「もしかしたら本当かも」と思ってしまうこともあります
。でも、陰謀論を信じることには大きな危険があります。この記事では、その理由をわかりやすく説明していきます。
1. 事実とウソのちがいがわからなくなる
陰謀論の一番の問題は、事実とウソのちがいがわからなくなることです。
人はふつう、ニュースや専門家の話を聞いて、「何が本当か」を知ろうとします。
でも、陰謀論を信じる人は、「テレビや新聞はうそをついている」「政府はかくしている」と思ってしまうため、本当の情報を信じなくなります。
たとえば、科学者が「ワクチンは安全です」と言っても、「科学者はお金のためにうそをついている」と考えるようになります。
すると、ワクチンを打たなかったり、間違った医療を信じてしまったりする危険があります。
2.自分にとって都合がいい情報しか流れてこなくなる
みなさんは毎日スマホを使っていますか?
ニュースを読んだり、動画を見たり、SNSで友だちとやりとりしたりと、スマホは今や私たちの生活に欠かせないものです。
でも、ちょっと不思議に思ったことはありませんか?
「なぜか、自分が気になることばかりスマホに出てくるな」とか、「自分と同じ考えの人の意見ばかり見るな」と感じたことがあるかもしれません。
それは、スマホやインターネットの仕組みが、あなたに「都合のいい情報」ばかりを見せるようになっているからです。
この記事では、スマホがどうしてそうなるのか、そしてそれがもたらす問題について、わかりやすく説明します。
スマホは「あなたが好きそうな情報」を選んでいる
スマホの中のアプリやウェブサイトは、あなたが「どんな記事を読んだか」「どんな動画を見たか」「どんな『いいね』をしたか」といった情報をもとに、「この人はこれが好きなんだな」と判断します。
そして次からは、あなたが「好きそうなもの」「興味を持ちそうなもの」だけをどんどん見せてくるようになります。
たとえば、犬の動画をたくさん見ていると、次の日からも犬の動画がたくさん出てきます。
逆に、猫の動画を見ていない人には、猫の動画はあまり出てきません。
このように、スマホはあなたの「好み」に合わせて情報を選んでくれるのです。
自分にとって「都合がいい」=「心地よい」情報
このような仕組みは、一見とても便利に思えます。見たいものが見られて、知りたいことがすぐにわかる。無駄な情報を見なくてすむからです。
しかし、これは「自分にとって都合のいい情報しか見なくなる」という大きな問題を生み出します。
人間は、だれでも「自分の考えが正しい」と思いたいものです。
だから、自分と同じ考えをしている人の話や、自分にとってうれしい情報を見つけると、安心します。
逆に、自分とちがう考えや、自分が嫌いな話は「見たくない」「信じたくない」と思ってしまうことが多いです。
スマホはこの「心地よい情報」をどんどん届けてくるため、気がつかないうちに、「自分の考えが正しい」「他の考えはまちがっている」と思うようになってしまうのです。
「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」
このような現象には、名前があります。
1つ目は「フィルターバブル」です。これは、ネットが自分の好みに合う情報だけを見せることで、自分のまわりに「情報のシャボン玉」ができてしまうという意味です。
2つ目は「エコーチェンバー」です。
これは、同じ考えの人だけで集まって、その意見ばかりを聞くことで、「やっぱり自分が正しい!」と思いこむようになることです。
まるで、こだま(エコー)のように、自分の声が返ってくるだけの部屋にいるような状態です。
この二つが合わさると、私たちは本当に大切な意見や、反対の考えを知るチャンスを失ってしまいます。
3. 人との関係が悪くなる
陰謀論を強く信じている人は、家族や友だちともけんかをすることがあります。
たとえば、「ワクチンを打ったら死ぬよ!」と言って、心配しているつもりでも、相手は「そんなの信じられない」と思います。
すると、言い合いになったり、関係がこわれてしまうこともあります。
また、陰謀論を信じる人は、「自分は本当のことを知っている」「他の人はだまされている」と考えることがあります。
そうなると、自分の考えだけを正しいと思い、他の人の意見を聞かなくなってしまいます。これは、とても危険なことです。
4. 国益を損なう
陰謀論を広めることは、社会全体に悪い影響をあたえます。
たとえば、ある陰謀論を信じた人が、「政府のやっていることは悪だ!」と思って、デモをしたり、暴力をふるったりすることもあります。
アメリカでは、2021年に国会議事堂(こっかいぎじどう)に人が押し入る事件がありました。これも陰謀論を信じた人たちの行動でした。
また、うその情報が広がることで、本当に必要な対策がとれなくなることもあります。
たとえば、病気が流行しているときに、「病気はうそだ」と思ってマスクをしなかったり、外に出歩いたりすると、ウイルスが広がってしまいます。
5. 情弱ビジネスに騙される
陰謀論を信じる人は、だまされやすくなるという危険もあります。
インターネットには、わざとうそを広めてお金をもうけようとする人もいます。
情弱ビジネスを行っている人は非常に知識が豊富です。
それゆえに、あたかも事実っぽく話すことができるため、知識が少ない人たちは簡単に騙されます。
「この水を飲めばワクチンの毒が消える」とか、「この石をもてば病気にならない」と言って、高いお金で売るのです。
こうした話を信じてしまうと、お金をだましとられるだけでなく、健康にも悪い影響が出ます。
正しい医療を受けずに、命にかかわることもあるのです。
6. なぜ陰謀論を信じてしまうのか?
では、なぜ人は陰謀論を信じてしまうのでしょうか? いくつかの理由があります。
まず、「不安」や「心配」が大きいとき、人はだれかのせいにしたくなります。
たとえば、コロナウイルスで多くの人が死んだり、仕事を失ったりしたとき、「これは誰かがわざとやったことだ」と考えることで、自分の気持ちを楽にしようとするのです。
また、SNSでは自分と同じ考えの人の意見ばかりが見えるようになります。
すると、「みんなもそう思っている」「これは本当だ」と感じてしまい、ますます陰謀論を信じるようになります。
7. どうやって陰謀論にまどわされないようにするか
それでは、陰謀論にまどわされないためには、どうしたらよいでしょうか? いくつかのポイントを紹介します。
・情報の出どころをよく見る
ニュースや記事を読むときは、「この情報はどこから来ているか」をよく見ましょう。
知らない人のブログや、名前のないSNSのアカウントよりも、新聞社や大学、病院など、信頼できる場所の情報を大切にしましょう。
・いろいろな意見を聞く
自分の考えとちがう意見にも耳をかたむけることが大切です。
一つの情報だけを信じるのではなく、反対の立場の意見も読んで、自分で考えるようにしましょう。
まとめ
陰謀論は、おもしろく感じたり、不安なときに心のよりどころになったりすることがあります。
でも、それを信じすぎると、事実がわからなくなったり、人間関係がこわれたり、社会に悪い影響をあたえたりすることになります。
これからの時代は、だれでもインターネットで情報を発信できる時代です。
だからこそ、私たちは「正しい情報を見分ける力」を持たなければなりません。
うわさ話やおどろくような話をすぐに信じるのではなく、少し立ち止まって、自分の目で見て、自分の頭で考えることが大切です。
陰謀論にまどわされず、正しい知識をもって生きていくこと。それが、わたしたち一人ひとりに求められている姿勢です。
陰謀論を信じているあなたは、非常に少数派であることを覚えておきましょう。